等身大の世の中と作られたエンタメ「マネーモンスター」を観てきました【感想・レビュー】

f:id:KamikiYuki:20160611134333j:plain

カミキユキ(@KamikiYuki)です。
正直いうと予告編ではここまで期待していませんでした。
そんな「マネーモンスター」をご紹介します。

関連記事

 

 

 

 

 

 

リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)が司会を務め、その巧みな話術で株価予想や視聴者への助言を行う高視聴率財テク番組「マネーモンスター」。番組ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)の指示を聞かず、アドリブ全開でリーが生放送に臨む中、拳銃を手にした男カイル(ジャック・オコンネル)がスタジオに乱入してくる。彼は番組の株式情報によって財産を全て失くしたと憤慨し、リーを人質に番組をジャック。さらに放送中に自分を陥れた株取引のからくりを白日のもとにさらすようパティに迫るが……。

- シネマトゥデイ -

女優でもあるジョディ・フォスターの監督作。
ジョージ・クルーニー主演、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネル出演。
ベテランの二人がダブル主演とでもいっていいほどの活躍です。

財テク番組マネーモンスターMCリー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)と
ディレクターパティ・フェン(ジュリア・ロバーツ)他、番組スタッフが
番組に乱入していたカイル・バドウェル(ジャック・オコンネル)に
スタジオをジャックされる事件が発生することで物語がスタートします。

メインはお金じゃなく人間ドラマでした

公開前よりジョディ・フォスター本人
お金に関わる問題を重きにしているわけでなく、
人間関係をメインとしていると話がありました。

マネー・ショートのようにある程度金融関係の用語を知っていないと...
ということはなく、知ってたら大筋の展開の行方が読めるかも...
というとこでしょう。

変化していくキャラクター像

この作品の面白い部分はキャラクター像の変化です。

特にそれが見えるのはMCのリーと犯人のカイル
リーはテレビのスターながら実のところただのエロ親父で、
惰性とエゴの塊、人への思いやりは皆無
番組ジャックされるとすごく臆病になるなど印象最悪

カイルは突然ジャックして拳銃をつきつけ、
番組に騙されて財産を失ったとわめき散らします。
番組に乱入して騒ぐ人に誰が同情しますか。
それにリーの言葉にイラだち、黙らせ、我を失ったかのように不幸自慢と責任転嫁するような物言いでしゃべりだす。
当初、リー以上にクズだなと思いましたね。

それが時間が進むにつれてリーとカイルの背景
お互いに理解出来るようになり、ぼくらも分かってくると
どうしても彼らの側に立ちたくなるのです。
そう誘導されたような感覚です。

また劇中冒頭で番組を見始める人々にスポットがあたります。
彼らはただのモブではなく、大勢の中の重要キャラクターたち
彼らの中にはこの番組のキーになる人がチラホラいます。
当初番組を観ている時のモブたちは野次馬感覚で観ているんだろうな、と思うことあれば、真剣に観ている者、テレビの世界とたかがくくる者様々です。
そんな中そんなもの知らないのばかりにゲームに興じる若者も。
しかし、突然本編の中心に現れた人の言葉を聞くと今までの様子から想像していたものと違う印象を与えてくれます。

これはマネーモンスターという名のエンタメ

なぜ、劇中番組の名前がそのまま映画タイトルなのでしょう。
番組のマネーモンスター財テクを紹介する娯楽番組
番組内でも面白おかしくSEを組み込んでいる。
また、リーは台本にない即興を用意することが多く、番組スタート時の演出はディレクターのパティが毎回知らないネタを仕込むという危なさ。
そんなMCをスターと認め観ている視聴者。

すべてはスタジオの中での出来事。
お金のテクニックを得て怪物になろうという番組。

しかし、今回カイルの乱入により箱の中で出来事では終わりません。
彼自身、投資に失敗し財産を失うことになっているし、
同じように失敗した人々がテレビの前にいます。
また、投資先の企業もCEO不在という問題になっており、
その真意にもお金の恐ろしさが潜んでいます。
その顛末が台本に書かれた番組のように演出されて終わりまで撮られ続けます。

映画タイトルでいうマネーモンスターとは
まさにお金が怪物といっていいでしょう。

透明性の否定とリアルなぼくらの世界

劇中で何度も「透明性」という言葉が出てきます。
これは物語上大きく関わる株取引に関わるものに指した言葉。

とうめい‐せい【透明性】

制度の運営や組織の活動状況が、第三者にはっきりとわかるようになっていること。また、その度合い。「政治資金の透明性を確保する」

- コトバンク デジタル大辞泉より -

つまりは疑う余地のない事実を説明することにある。

しかし、劇中では人は嘘もつけば隠し事もする。
番組を観ている視聴者はテレビの向こうのことだと楽しんで興じる。
視聴者だけでなく他番組も自分は関係ないことのように笑いのネタにする。
事件が終われば何事もなかったかのように視聴前の行動に戻る。
番組内の映像を使ってコラを作って動画配信して面白おかしく笑う。

そんな互いに知らない不透明なリアルがそこにある。
テレビ番組という不特定多数が観る世界を題材に使ったのは、
番組に映っている者と作っている当事者、その番組を観ている視聴者、
そしてそのどちらもに関わる題材に使われている人々。
様々な人の視点から見えるリアルを表現しています。

先のモブたちの話もそうですが
彼ら全員が不透明な何かで繋がるけどいとも簡単に切れてしまう
そんなありそうであり得ない結果になるあたりもリアル。

 

 

実際、番組ジャックの話からこんな展開になるとは思ってなかった!
キャラクターの心理描写が自然と入ってくるように見せてくれるし
中盤からハラハラしっぱなしで、見守るように事の次第を観ていました。
ハマるように演出されていくのにどうしても直面する事実が現実に戻してしまう。

 

正直興味や好みで紹介する映画とは違います。
今年でいうとスポットライトにひけを取らない好評価ですよ。