ばかうけは愛を残した「メッセージ」を観てきました【感想・レビュー】

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最近は劇場で観ることの意義を感じる作品が増えている気がします。
そう思わせてくれた作品だった。

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巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し……。

- シネマトゥデイ -

公開前より「ばかうけ」と呼ばれ続けた作品。
監督ですらあれをモチーフにしたんだ、と本当か嘘か分からないコメントで寛容な反応だった本作ですが内容の方はいかほど。

本作は突如現れた巨大浮遊物体ばかうけとそれに乗り込んでいる宇宙人との邂逅で人類が目的を探っていくためにコミュニケーションをとっていく物語となっています。
予告編からも単純なSFスリラーと思いがちな恐怖を煽る映像にホラーに近しいものが苦手なぼくは少し敬遠していましたが。
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の新作なので楽しみにしておりました。

プリズナーズ複製された男など終始息苦しい雰囲気を出す作品ばかりですが、恐怖を煽るものではなく単純にその世界に没入して登場人物と同じ空気感を味わう緊張感が特徴です。
本作もそのような作品になると期待しております。

原作はテッド・チャンあなたの人生の物語

主演はルイーズ・バンクス役のエイミー・アダムス
言語学の第一人者として宇宙人の言語翻訳で招集された大学教授。
昨今ではバットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生などのDCユニバースにはスーパーマン/クラーク・ケントの恋人ロイス・レインビッグ・アイズマーガレット・キーンを演じている。

 

イアン・ドネリー役のジェレミー・レナー
宇宙人の地球飛来の目的を探るべく招集された科学者の一人。
...ダメだ、彼を見る度ホークアイにしか見えない。
アベンジャーズを始めとしたマーベルユニバースのホークアイ/クリント・バートンを演じる他、ミッション・インポッシンブルではウィリアム・ブラント役を演じている。
個人的にはどの作品を観てもホークアイにしか見えない。

 

ウェバー大佐役にフォレスト・ウィテカー
ローグ・ワン ソウ・ゲレラを演じた他、ケープタウンではアリ・ソケラを演じた。 

他、ハルペーン捜査官マイケル・スタールバーグマークス大尉マーク・オブライエン、そして宇宙人に攻撃の意思を見せる中国の将軍シャン上将ツィ・マー

 

最後まで観たら納得?そしてスッキリ終わらせてくれないストーリー

本作は派手な戦闘シーンとかはなくて、とにかく宇宙人との対話。
言語学者のルイーズは突然飛来した宇宙船の目的を宇宙人に聞き出すべく招集され、相棒となるイアンと共に宇宙人とのコミュニケーションをとっていく。
宇宙人は宇宙船内部の壁の向こうにおり、タコのような脚をもって浮遊している。発する声は謎だし吐き出す墨のようなもので円状の文字を出す事で対話のヒントを得ていくことになる。ルイーズたちはしばらく彼らに質問を繰り返す事で文字の共通性を分析し、最終的に「何の目的で地球に来たのか?」を投げかける。

宇宙人との邂逅から不安を煽る曲が続き、
あまり息つく暇を与えさせない印象でした。
更にルイーズは過去娘がいて、先に逝ってしまう過程までの二人の思い出がフラッシュバックにように再生される。これを観ていることで自身は宇宙人の対話に臨むルイーズ・バンクスとして不安を抱きながらストーリーに没頭していく。

正直いうと中盤冗長のような場面を感じる気がするが、
最終的にSFならではのカタルシスを得る事が出来ます。
ある一面ではこれでハッピーエンドなのか、考えさせてくれる。

私は僕はルイーズ・バンクス。

とにかく視聴者にお前はルイーズだ、と言い聞かせてきます。
先に述べたルイーズの過去体験したようなフラッシュバック。
娘の誕生から、成長、互いに愛してると言い合う親子、反抗期に嫌いと言われる、病気が発覚する、病床で逝く、悲しみに暮れながら病院を去る。
情報がない中、ルイーズの背景だけ理解していく。
その後大学で講義を始めようとするところで宇宙船の飛来に遭遇。
ルイーズは言語学者として宇宙人の言葉を翻訳する為に招集されます。

次に聞こえるのは呼吸
彼女は初めて宇宙船に乗り込みます。
予防接種をし、防護服を身にまとい、緊張なのか恐怖なのか、いつもより息が荒い。この呼吸音が劇場の暗闇の中で大音量で聞こえてくる。まさに自分が密閉された防護服の中で息しているかのように
それが自身にも更なる閉塞感と不安感を煽られる要素となっています。

そして宇宙人と対話していくことでたまに起こるフラッシュバック。
娘との会話...そして...
これが何を意味するのか。
物語が進むことで色々なヒントが出てきます。
ぼくは娘との会話以外の場面になってやっと分かりましたが...。

そうして真実が分かった時、
ルイーズである、
私は...
僕は...
この終わりに納得出来るのか...気になるところです。

これは対地球外生命体シミュレーションなのか。

過去何度も宇宙人が地球にやってくる作品はありました。
基本的に一方的に攻撃され、それに対して反撃し最後は...
そんな作品で、主には宇宙人との戦闘を主にした作品でしたね。
これもある種のシミュレーションですが...。

昨年ゴジラという未知の災害へのシミュレーション
そんな側面を持つ作品が公開されました。

遭遇したことのないものに対して日本は世界はどう対応するのか。
今の世界情勢からの行動や日本の様々な組織の動き方が読み取れる作品でしたね。

この作品も同様に地球外生命体に対するシミュレーションではないでしょうか。作中、12の宇宙船が世界各地に飛来します。各々の国でどう対応するか異なります。対話で意図を探る者、攻勢に出る者、それに便乗する者。
個人でいえば、宇宙船の飛来から世界の終わりを予期。絶望のあまり犯罪数が増加
SNSで拡散される宇宙人の姿に恐怖する、人類は予期せぬ宇宙人との邂逅にどう反応するのかシミュレートしています。

これは納得出来るかで好みが分かれるか?

最後まで観れば納得する、と言いましたが
この手の作品はそういう映画なんだ、と納得出来るかで評価が分かれそうだなと思いますね。SF的考察もありますが、宇宙人との対話なのか、予想もつかない事態にバラバラな人類の結束なのか、焦点があたった部分で腑に落ちるか。
深く掘り下げると色々ツッコミが入ると思います。

「未来が分かったら...」

定められた運命は変わらないのか、
知った時点で事象は変わるのか、行動すれば変わるのか、
それでも尚ただ1本の道筋なのか。
明確な答えがない以上、考え方にも様々な可能性がある。

本当に楽しむなら自分がルイーズであると思って鑑賞して欲しい。
そしてその臨場感を味あうなら劇場へ。

冒頭でいいましたが
劇場で観るべき作品
一般的な派手さだけが劇場で観るべき意味ではないな。

 

 満足度:★★★★☆☆(7/10)

中盤の中だるみがつらいところですが、最終的に良かったので。