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言葉で人を殺す「虐殺器官」を観てきました【感想・レビュー】

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一昨年より公開されています。
Project Itohの三部作ようやく最後の1本です。

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開発途上にある国々で頻発する紛争や虐殺の背後に存在する、ジョン・ポールという謎に包まれた男。アメリカ軍の特殊部隊大尉クラヴィス・シェパードは特殊暗殺部隊を率いて、彼の行方を追跡していく。

- シネマトゥデイ -

34歳の若さでこの世を去った伊藤計劃
彼の書いた三部作の最初の作品が虐殺器官です。

本来ならば虐殺器官、ハーモニーの時系列で公開される作品でしたが
制作会社のマングローブの破綻によりジェノスタジオが引き継ぎ、
1年経った2016年11月にこの日の公開が決まりました。
R15+の映倫のレーティングを受けているので
かなり残虐なシーンが含まれていると思われます。

これの続編であるハーモニー
人の健康管理をモニタリングしている未来を描いており、
管理されている=監視されているディストピア
人間があるべき姿を問う作品となっています。

なお、屍者の帝国伊藤計劃が亡くなる時にあった原稿30枚を元に
親交のあった円城塔が書き起こした作品で、アニメ映画されています。
こちらは屍者蘇生の技術が進歩した仮想19世紀を舞台に
ジョン・ワトソンが生前の記憶を持つ屍者蘇生を可能とする、
ヴィクターの手記を求め世界を巡るという作品です。
三部作の中では一番マイルドな作品だと思います。

 

 

では本作、虐殺器官についてスタッフ・キャストから紹介していきます。

監督は村瀬修功
新機動戦記ガンダムWアルジェントソーマキャラクターデザインを務め、
昨今ではGANGSTA.の監督を務めた。サンライズ作品に関わることが多い。
本作もキャラクターデザインを兼任。

キャラクター原案redjuice
Project itohの三部作全てのキャラクター原案を担当しており、
同ノイタミナにおいてギルティクラウンのキャラクター原案も担当。
Webデザインイラストレーターを生業としている。
無機質なイメージが特徴ですね。
人物イラストとは別でWebデザインから培われたのか
3Dモデリングを元にしたメカニックデザインもこなす人です。

主人公クラヴィス・シェパード中村悠一
ぼくからしたら機動戦士ガンダムOOでガンダムのスペックに心奪われるアメリカを中心としたユニオンのパイロット、グラハム・エーカーなんですが。
最近でいうとKINGS GLAIVE FF15ならびにFF15本編でレイヴス・ノックス・フルーレですね。映画では復讐に燃えるかませ犬みたいな立場ですが、ゲーム本編で印象がガラリと変わります。 

虐殺の起こる場所に現れる謎の男、ジョン・ポール櫻井孝宏
松尾維新原作、傷物語忍野メメ
一昨年から公開されているデジモンアドベンチャーtriテントモンを演じています。

他、クラヴィスと同じ部隊のウィリアムズ三上哲
ドクター・ストレンジストレンジ役のベネディクト・カンバーバッチの吹替を担当されていましたね。SHRLOCKシャーロックでも同様。 

同じく部隊のアレックス役に梶裕貴リーランド役に石川界人
同じく部隊のジョンと関係のあると思われるチェコ語教師ルツェア小林沙苗
他、大塚明夫、土師孝也、柄本拓哉が出演。

 

正直過去2作はハッピーエンドとはいえない
なんともいえなくなるラストで残ったものはなんだ、とばかりでした。
そういう感じになるのが伊藤計劃作品の良いところなので、
今回もそのあたり期待したいところです。

ただ気になるのは原作途中まで読んでてすごく難しいんですよ!
そこをどこまで噛み砕けるか、ですね。

では、感想の方に行ってみましょう。

 

 

これは難解!言葉がテーマなだけに理解よ遅れるな!

正直いうとあまり物語に没頭できなかった!
それほどにストーリーラインは難解。
表面上のストーリーは個人情報の管理が徹底された近未来。
各国で内乱を誘発しているジョン・ポールなる人物の暗殺を目的とする、アメリカのテロ鎮圧部隊を主軸に進む物語。
しかし内容は文学の比喩や政治的、軍事的要素が含まれ、高度なジョークが行き交う会話劇がこれでもかってほどに凝縮された内容になっています。

言葉がテーマゆえです。

作中でも人は生まれながらに言葉を文法を作る器官がある、
地獄は頭の中にある、などといったキャッチーなセンテンスが登場します。
登場する言葉の研究も興味深い内容ではありました。

問題は理解が追いつかないのです。
原作からセリフはかなり削ぎ落とされていると思いますが
それでも多くのセリフがあって、話しているスピードはそうでもないけど
芸術、文学の比喩が多すぎてそのものを理解していないと無理だったり
知らずとも比喩の正体を導き出した時には次の比喩と追いつかない!
優しくいうとアメリカンジョークでしかやりとりしていないってレベル。

元々そういうSF小説なので分かりやすくしろとは言えないし、
個人的に知識不足が問題ですね。

 

こんな世界になりえたと思う技術たち

世界観的には9.11のあとの未来はこうなる、
という伊藤計劃の想像を元に構築されている世界。
街並みは今と変わりないですが、情報統制がされ、
個人情報管理によりテロリズムの抑制、生活圏の安心を保証しています。
映画になったのもこのあたりを映像として表現したかったのでしょうね
このあとの感想の為に先にいくつか説明しておきます。

ID

個人情報認証を指す。
網膜や指紋、様々な個人情報を情報セキュリティ会社に登録、管理されている。
近代の兵器はIDなしに安全装置が外れない。
序盤のゲリラ部隊も旧式を使用しており、
クラヴィスたちが潜入する際に旧式IDを奪って利用している。

オルタナ(副現実)

いわゆる拡張現実(AR)を指していて、
ウェアラブルコンピュータを内蔵したコンタクトレンズ。
視覚で目に映るものの情報を直接見せてくれる。
軍事用には落とさないとように角膜に直接塗るナノマシンタイプがある。
ちなみにこの延長線上にあるのがオーグメンテッド・リアリティ。
世界観を同じくするハーモニーに登場する。

人工筋肉

流線型のしなやかな動きを実現出来る技術。
兵器の素材に利用されていて、これを応用して侵入用ポッドなどに使用。
ポッドに関しては使用後廃棄モードになり人工筋肉を壊死させて分解、
他国への技術漏洩を防ぐ意味がある。

環境適応迷彩

いわゆる光学迷彩で背景にとけ込める。

感情調整と痛覚マスキング

部隊のメンバーは最高のコンディションで作戦を完遂できるよう、
感情を調整され、作戦行動中人を殺しても揺さぶられないよう
常に感情値はフラットになるようモニタされている。
また痛覚は遮断されるがケガをしたなどの感覚だけ気付けて
処置出来るようになっている。

クラヴィスの目とキャラクターデザイン

特徴的といえば、クラヴィスの目線で見せるシーンが多くあり
拡張現実であるオルタナの視覚表現を見せるのが目的ですが、
作戦行動中の彼の目線ではゲームをしているかのような描写でした。
実際の軍人もこんな感じなんでしょうか。
感情調整された兵士の見る戦場はこんな感じなのか。
ジョンが彼らに「物足りなさを感じている」と言いますが、まさにイージーなゲームをプレイして物足りないと感じている。そう思うと作戦中のやりとりとかが、FPSゲームの1シーンじゃないかと思えてきてゲーム感覚なのだ、と言ってるみたい

そして気になるのはキャラクターデザイン
三部作の中で一番特徴が弱いんですよね。
こうも弱いと意図的じゃないのかと思えて来ます。

村瀬修功のデザインと思えば...
なんとなくガンダムWのキャラクターはこんな感じ。
redjuiceの原案を落とし込むとそうなったのか、どうなのか
やっぱり意図的に弱くしたんじゃないかな...

 

まとめ

先もいいました、原作途中までしか読んでないのですが
それまででも色々な要素が削ぎ落とされていたのは分かりました。
まぁ、改変とか...ね。
クラヴィスの両親の話とか、
「地獄は頭の中にある」といったアレックスの死の経緯とか 
それは映画に収めるのに上手くまとめた内容ではないかと思います。
あとラストシーンが分かりづらいですね。
この結果のあとハーモニーの世界に続く出来事が起こるはずなんですが。
見終えたあとなんとも言えない気分にさせるのがProject itohでしたが、
今回は追いつけなくて、なんともいえない。

あとジョン・ポール役の櫻井さんが
同じくノイタミナSPYCHO-PASS槙島と被ってしまうんだな。
内容的に文学的に言葉の引用など語りぐさがどうしても。
あと終盤のクラヴィスとジョンが相対するシーンとか。

とりあえず伊藤計劃作品の映画3本を観るなら
公開順の通り、屍者の帝国、ハーモニー、虐殺器官の順に
話の内容も残虐性もマイルドだと思います。
正直R15+の虐殺器官よりPG12のハーモニーの方が
潜在想像的には痛々しく残虐であるように思えます。
あのフォークのシーンとかね。

 

うーん、やっぱり虐殺器官映像で伝えるには難しい作品ですね。
ガジェット的なものは画になって良かったけど、
もう一つのテーマである重要なストーリーライン
目どころか耳に伝えられる情報では処理が追いつかない
ぼくもまだ完読してないけど本でじっくり読むことをオススメしたい

実はこの作品、ハリウッドで実写化するとかしないとか。

満足度:★☆☆☆☆(6/10)