人はここまで信念を貫けるのか、銃を持たずに戦地に赴いた「ハクソー・リッジ」を観てきました【感想・レビュー】

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もう公開終わってしまうんじゃないかってたタイミングですね。

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第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはいけないという信念を持ち、軍隊に入ってもその意思を変えようとしなかった。彼は、人の命を奪うことを禁ずる宗教の教えを守ろうとするが、最終的に軍法会議にかけられる。その後、妻(テリーサ・パーマー)と父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、デズモンドは武器の携行なしに戦場に向かうことを許可され……。

- シネマトゥデイ -

予告編で気になった作品ですね。
まぁ小島秀夫監督がレビューしていたので観ました。
第二次世界大戦、沖縄において銃を持たずに戦地に赴いた衛生兵が多くの人々を救った事実を元にした作品です。
ハクソーリッジとは沖縄にあるアメリカ軍が上陸して攻めた側の断崖絶壁。
アメリカはこの断崖絶壁を網状のロープで登って攻めましたが当時激戦区の一つでした。

監督はメル・ギブソン
マッドマックスリーサル・ウェポンでは主演を演じた。
昨今の出演作ではエクスペンダブルズ3 ワールドミッション
監督作品はパッションやアポカリプト。
地味に彼の作品全然観てないな。

主演はデズモンド・ドスを演じるアンドリュー・ガーフィールド
沈黙ーサイレンスーでは恩師を捜すために訪れた日本でキリストの教えを拒まれ、棄教を迫られ、沈黙を続ける神と信じる教えに葛藤する姿は名演。
本作も神父ではありませんがキリスト教の教えを元に自分なりの役割を見いだす衛生兵を演じます。

クローヴァー大尉サム・ワーシントン
アバターで主演を演じて時の人となった人物。
本作ではデスモンドの隊の上官にあたり、良心的兵役拒否者であるデズモンドの除隊を促すよう嫌がらせを勧める。

スミティ・ライカールーク・ブレイシー
X-ミッションでジョニー・ユタやG.I.ジョーバック2リベンジでコブラコマンダー役を演じる。
同期の兵士として周りの兵士の嫌がらせとは異なるがデズモンドの考えに理解しない対立する立場として登場する。

ハウエル軍曹ヴィンス・ボーン
ロスト・ワールド/ジュラシック・パークMr.&Mrs.スミス、イントゥ・ザ・ワイルドに出演。
嫌がらせをし、兵士達にも煽るデズモンドの直属の上官ととして登場。

ドロシー・ヒュッテテリーサ・パーマー
きみがくれた物語、ライト/オフ、トリプル9 裏切りのコードなどに出演。
デズモンドの生涯支える妻として、なりそめから演じる。

トム・ドスヒューゴ・ウィーヴィング
マトリックス三部作ロード・オブ・ザ・リング三部作、ホビットなど代表的作品に出演しながらもトランスフォーマーではメガトロンの声を当てる。
本作は第一次大戦で心に傷を負い酔いつぶれたデズモンドの父を演じる。

 

苦痛と恐怖、硝煙の中を駆け抜け信念を貫いた男の生き様を見よ。

本作は前半はデズモンドの日常の半生、後半は戦場です。
前半はというと汝、殺すことなかれの刻んだ弟を殺しかけたトラウマから第一次世界大戦で心に傷を負い妻とは喧嘩の絶えない父親、看護士ドロシーとの出会いなど彼の日常が描かれています。
良心的兵役拒否者ながらも自分の出来ることで従軍したいと志願
銃を持つことを拒否することで上官には除隊を勧められ、兵士からの嫌がらせの日々。
色々あって銃器不携帯での従軍を認められるまでが前半です。

後半は沖縄前田高地。アメリカ軍がハクソーリッジと呼ぶ戦場へ。
崖を登って進軍していきますが過激な戦場シーンが続きます。

暴虐な殺戮シーン。

死屍累々が築かれていく戦闘シーンは堪える人も多いかと思います。
戦線は好調でしたが転機が訪れ爆撃と共に退却を余儀なくされ...
次第に戦場が混乱する中、負傷で取り残される兵士を見てデズモンドは決意する。

ここからが見せ場でした。
デズモンドの勇姿に注目です。

なぜ僕はここにいるのか、それを問うデズモンドが導き出した答えが
戦場を走らせる。
ずっと凄惨な戦場を見せられて辛かったかもしれませんが
ここから心震える展開です。

たがう信念とそれを越えた人間ドラマ

汝、殺すことなかれ。

デズモンドはそれをいかなる時も守る。
同じ信者でも戦争は人を殺すために行っているのではないからそれに反しない、という考えもあります。戦争は人を殺すことだ、と。
そんな上官や兵士たちと異なる信念を持つデズモンドはそれを臆することなく貫きます。

それが訓練課程において、兵士の嫌がらせに繋がります。
上官からはトイレや兵舎の掃除をさせらて、兵士には就寝中に暴行を受ける。
銃を持って戦えない兵士がいざ戦場では足手まといになり、隊の士気に影響するという懸念からです。上官としては除隊を勧めながらも頑なに従軍を意思を伝えるデズモンドには嫌気が差して自主的に除隊させようと連帯責任と称して隊全員に訓練項目を増やすなどして兵士にはデズモンドがいるからと嫌がらせが始まるんですね。

その中でデズモンドの考えに嫌悪を抱く兵士がいました。
スミティ
デズモンドとは訓練でも1,2位を競い合う兵士。
彼はデズモンドが臆病だから人を殺せないと考え、殴ってみろと挑発します。
婚約者のドロシーの写真を取り上げては怒らせてみたり...
しかしそれ以上の嫌がらせはしない。

そんな彼と戦場で言葉を交わし、連携をとる姿を見てると
認め合えたようで男達の友情(と呼ぶべきか)にこみ上げてきますね。
お互いに境遇も信念も異なれど理解し合った仲でした。

また、先の大戦で心に傷を負った父親トム・ドス
心の傷から酒に溺れ、デズモンドら兄弟に暴力を奮うこともしばしば。
しかしデズモンドが志願した時は「戦場でお前の大義は貫けない」
とデズモンドの胸中を理解しているかのように語り、
意思が固い息子を送り出します。
そののちも息子を心配し行動する姿が胸をうつ。

そしてデズモンドの最高の理解者ドロシー
女性免疫の少ないデズモンドが一目惚れし、彼なりにアプローチをした結果結ばれた仲ですが、彼の意思と信念を理解し、支えた人物。
休暇を貰えないことで結婚式に到着できなかった彼を信じているあたり十分に互いを理解しているといえるでしょう。

 

キャッチコピーがちがうよね

この映画のキャッチコピー
「世界一の臆病者が英雄になった理由とはー」

いや、臆病者という言葉は違うんじゃないかなぁ。
戦争に怯えるでもなければ人を殺せないことが臆病であることにもならない。
この功績は結果論でしかないけれど、デズモンド・ドスは信念を持って戦場に行き、自分の役割を全うした。これが臆病者と呼ぶのはどうか。劇中では結構キワキワな行動をしてるんですよね。自分の身よりも戦う兵士の命を重要視しているような感じです。実際自軍だけでなく敵の日本兵も助けているという話もあります。

とはいえ、アメリカでも徴兵制はとられたといいます。
軍の士気から志願兵の有用性は理解していたでしょうし、志願するものの中には失格の烙印を押され自殺した者がいるというのもデズモンドの語りにあったとおり、愛国心を煽って志願をさせる、兵役のない者は非愛国主義や臆病者と陰で言われるような環境もあったのかもしれません。

まぁ映画鑑賞への導入としては十分な言葉ですよね。
実際観てもらって彼が臆病者ではないことを確認していただきたいと思います。

 

満足度:★★★★☆☆(7/10)