あらゆる沈黙にタコ殴りにされた「沈黙- サイレンス -」を観てきました【感想・レビュー】

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カミキユキ(@KamikiYuki)です。 
お久しぶりです。
ずっとゲームやってたかスキーで遊んでました。

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江戸幕府によるキリシタン弾圧が激しさを増していた17世紀。長崎で宣教師のフェレイラ(リーアム・ニーソン)が捕まって棄教したとの知らせを受けた彼の弟子ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライヴァー)は、キチジロー(窪塚洋介)の協力で日本に潜入する。その後彼らは、隠れキリシタンと呼ばれる人々と出会い……。

- シネマトゥデイ -

話題になった作品というだけで基礎知識はありません。
最初はマーティン・スコセッシが日本の小説、
しかも江戸時代を舞台のものを撮るということだけでした。
当然日本の俳優も多数出演する...窪塚洋介なんて久しぶりだなぁ。
スケジュールを見たら驚きなのが2時間41分だと?
161分もやるのか! 

色々気になったし、ミニシアターでの公開でも1日の上映回数が比較的多い方というのも注目されていると感じましたね。

事実、近場のミニシアターでは席が埋まっておりまして
一人で来ていたぼくはなんとか空いている穴に埋まった感じです。

 

監督はマーティン・スコセッシ
実は監督作品あまり観てないんですよね。
最近でいうとヒューゴの不思議な発明ウルフ・オブ・ウォールストリートですね、観てない...。

主演はロドリゴアンドリュー・ガーフィールド
アメイジング・スパイダーマンピーター・パーカー/スパイダーマンが代表的かと。
もっと遡るとソーシャル・ネットワークザッカーバーグと共にFacebookを開発したアドゥアルド・サベリン

同じく日本に来たガルペアダム・ドライバー
スターウォーズフォースの覚醒カイロ・レンを演じた人ですね。
映画観て見たことあるな、と思ったんですよ。

そして、日本に帰りたくて案内係を受けるキチジロー役を窪塚洋介
ホント久しぶりに見たな、この人。
ぼくが記憶にあるのはピンポン漂流教室くらいだよ。
あと、魔界転生かな。

他にも日本が舞台だけあって多くの日本人俳優が出演しています。
浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松奈菜、加瀬亮、笈田ヨシと主要なキャストばかりです。まぁ日本舞台だしね、ほとんど日本人だったよ、そりゃ。

あらすじでは日本で棄教した宣教師フェレイラの消息を探る為に弟子のロドリゴとガルペが日本・長崎に赴くとありますが、全体的な話でいうとキリシタンの迫害の話なんですね。
それを布教するポルトガル人と教徒の日本人、主に百姓達の迫害されている側。
異教を危険視して教徒を減らそうする幕府、長崎奉行所の迫害する側。
フェレイラを探しながらも隠れキリシタンに教えを説くロドリゴは敬虔な信徒や自身が有用な人間であることへの喜びで日本に来て良かったと思うようになります。

 

一言、「すごい」しか言えない、映像・音響表現

冒頭からなんですけど

うるさいくらいの虫の鳴き声がひびくんですね。

画面は真っ暗のまま。

だんだん、だんだん大きくなって最高潮に達したところで....

音が無くなり、画面の中央に現れる

Silence

ここで「すげぇ...」と声を漏らしていました。
やっべ、かっけぇ...語彙力が怪しくなってきた。
もうこの時点でこの映画は違うぞ、と感じましたね。

とにかく環境音しか聞こえないんですよね。
そして音量の幅が極端で、ザワザワしてるか無音か。
ここはもう一度注意深く耳を澄ませて観てみれば音の強弱の意味が分かりそう。
ただロドリゴたちが心揺さぶられる時はざわついていた気がします。
BGMという曲を流すことをやめて、舞台のその場の音だけでスクリーンの中に引き込んでいる、言葉にしてみると結構すごいことです。
実際2時間40分もあるのに中だるみはなかったかな。
ロドリゴからしたら異国に放り出されているわけですからその立場で観ると休む暇もなく新たな景色が見えてくる。

映像も邦画ではなかなか見られない表現をしています。
日本にこんな景色があるのか、と思うほど(実際ロケ地は台湾)

登場人物もその性格にあった雰囲気を漂わせていています。
キチジロー演じる窪塚洋介を除けば、モキチ役の塚本晋也は結構キャラが立っていて、シン・ゴジラの時と同じくらいのスポット的活躍ですね。

人にとって信仰とは

江戸時代という限られた異邦人しか立ち入ることの出来なかった日本
仏教を信仰しながらも、厳しい環境や立場でキリスト教にすがった百姓たち。
それを広める異邦人、それらを咎める幕府。
キリスト教を信仰しているとはいえ、百姓達がみな教えを理解しているわけではありませんでした。言葉が分かる者が少なかったからです。
徳を積んで仏へ昇華する仏教の教えより、告海といい罪を告白することで神に許しを得て、死した時には天国で苦しみのない世界へ行くという言葉は彼らには甘い汁といえたのでしょう。中途半端に理解したばかりに都合の良いところだけ飲み込んだ人もいれば都合良く解釈した人もいます。

その最たる例がキチジローだと思っています。
彼は誰よりも言葉を理解していましたが、
キリスト教の教えで上手く精神の安定を図っています。
そのあたり実際に見てもらうと分かると思います。
浮いている分、彼がある種主人公ではないかと思うくらい。

あらゆる沈黙を伝えた

映画の表現として音の強弱で沈黙を伝えています。
虫の鳴き声や、さざ波、寺のお経など実際にその舞台で聞こえる音が主。
シーンの要所要所で音が止み、展開が変わっていきます。

物語上でもロドリゴのモノローグの中に何度も沈黙という言葉が登場します。
どんな過酷な状況でも主である神が沈黙している、というのです。
過酷な状況は神による試練と捉えていますが、どんなに敬虔であっても取り返しのつかない状況でも沈黙している、そんな状況にロドリゴは苦悩していきます。

またこれを沈黙と捉えるかは難しいですが、
沈黙が何を指すかといえば、読むことの出来ない人の心ではないか、と。
もちろんロドリゴが神の沈黙に苦悩するあたりもそれを指すのかな。
彼自身の立場で物語を捉えていると、神以外にも隠れキリシタンや幕府の要人など様々な人の表面は見えてきますが内心どうなのか分かりません。
終盤で彼の視点から離れて俯瞰で捉えるようなシーンがあります。
彼の選択したあとはぼくらはその後の彼の心の内が分からないというわけです。

まとめ

これ観たあと気にしていた知人に感想を聞かれたんですが、これしか言えない

すごい

うん、非常に感想に困る。
いやーもう...なんていうかすごいんですよ。
「キリスト教を取り締まって踏み絵とかやってた時代かー」
ていう感覚でいいんです、そんなの学んだなという感じで行って欲しい。

すごいから

原作は遠藤周作が書いたものですが、
フェレイラは史実上実在する人物ですし、ロドリゴもモデルとなった人物がいます。江戸時代のキリシタンやそれを取り締まる奉行、宣教師たちがどんな状況であったか知るには良い題材です。
ぼくも勉強になりましたね。