たとえ虚構でもこの気持ちは真実だった「さよならの朝に約束の花をかざろう」を観てきました【感想・レビュー】

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とうとう語る時がきたようですね。
本当なら0時きっかりにアップしようと思っていたのに

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10代半ばで外見の成長がストップし、数百年生きることができるイオルフの民。彼らは人里離れた土地で、日々の出来事をヒビオルという布に織り込む生活を送っていた。だが、イオルフの少女マキアは平穏で仲間に恵まれた生活の中で、いいようのない孤独を感じる。ある日、イオルフの長寿の血を求めるメザーテ軍が侵攻してくる。命からがら森の中へと逃げ込んだマキアは、親を失った赤ん坊を見つける。

 - シネマトゥデイ -

本作注目したいのはもちろん岡田麿里の描く世界。
も、ですが...

キャラクター原案:吉田明彦

音楽:川井憲次

というゲーム・アニメを嗜むぼくの大好物が。
吉田明彦クエストスクウェア(現スクウェアエニックス)出身のイラストレーターで、ファイナルファンタジーシリーズキャラクターデザインイメージビジュアルなど描かれていた方です。最近はグランブルーファンタジーニーアオートマタのキャラクターデザインを担当されています。
古くから知っている人はオウガシリーズFFタクティクスなどですかね。

川井憲次はアニメ、ゲーム、実写問わず様々な音楽制作を行ってきた方で、代表的なのはパトレイバーシリーズでしょうか。というより押井守作品?
実写映画でいうとリング、リング2
最近でいうと世界は今日から君のものや少し前ですがガラムウォーズ
特徴的な音作りをされる方なので一度覚えるとスタッフを確認せずとも「川井さんだ」と気づいてしまいますね。

マキア石見舞菜香
長寿のイオルフの民の孤児でラシーヌと共に住んでいる。
里を襲われることによって外界で暮らすことになる。

エリアル入野自由
外界でマキアが拾った赤ん坊でマキアの子となる。
互いに親子というものを知らずもマキアを慕って育っていく。

レイリア茅野愛衣
マキアの幼馴染にしてイオルフ一の美女。
メザーテに襲われて誘拐される。

クリム梶裕貴
マキア、レイリアの幼馴染。
レイリアと恋仲だったがメザーテの強襲で引き裂かれる。

ラシーヌ沢城みゆき
イオルフの民の長老。長老ながら姿は少女のまま。
マキアと共に住んでいる。

ラング細谷佳正
マキアが拾われたミドの子、長男。
次第にマキアに恋心を抱いていく。

ミド佐藤利奈
マキアを家に住まわせた二児の母。
マキアの母親としての手本となる。

ディタ日笠陽子
村に住むエリアルの幼馴染。

メドメル久野美咲
メザーテの姫。母親を知らずに育つ。

イゾル杉田智和
メザーテの軍人で王の命でイオルフの襲撃を指揮した人物。
国に忠実な騎士

バロウに平田広明
イオルフの織物を扱う商人。
ラシーヌとは長い付き合いのようでマキアとも顔見知り。

 

キャストの紹介は簡単にしときます。
石見舞菜香は若手のようですね。主要キャラクターとしての出演はいくつかあるようですが、ぼくが観てないアニメが多いなぁ。
入野自由は古くは千と千尋の神隠しでハク、あの日見た花を僕達はまだ知らないの宿海仁太と岡田麿里脚本の主人公ですね。
茅野愛衣はあの日見た花を僕達はまだ知らないの本間芽衣子、ガールズ&パンツァーの武部沙織など...。
梶裕貴は進撃の巨人のエレン・イェーガー、七つの大罪のメリオダス、レビューを書いた作品でいうとGODZILLAのアダム・ビンデバルト、虐殺器官のアレックス、BLAME!のアツジあたりでしょうか。
とりあえずこのあたりで...。 

 

実は公開日の大体1ヶ月前に舞台挨拶付き試写会に当選しまして
そちらを鑑賞して参りました。
舞台挨拶には監督・脚本の岡田麿里、プロデューサーの堀川憲司、美術監督の東池和生の3名が登壇しました。声優さんでもよかったですが、コメントがアイドル的ファン向けなので裏方の作り手の人のお話が聞けるのはいいですね。
脚本業が主な岡田さんは表に出るのがなれていないのか緊張されている様子でしたが、堀川さんや特に今回の舞台挨拶から登壇した*1東池さんの軽快なトークで次第に馴染んでいった感じがします。
堀川さんのいう「岡田さんの世界観を形にした作品が作りたい」という意思と
「それを実現するにはどうしたら良いか」と考え続けた岡田さん、
それによって今回脚本自ら監督を務めるに至ったようです。
また、東池さんの描く背景が大きく取り上げられ、

「闇の温かさ」(ちょっとうろ覚え)

それを感じ取れるものであると岡田さんも堀川さんも言っていました。
というのも本作はファンタジー世界でよく取り上げられる中世に近しい世界観なので暗闇にロウソク1本や月明かりというシーンが多い。でもそんなシーンでも温かみを感じられる画作りがされていてそこに注目して欲しい。
家庭のテレビでは観ることの出来ない世界観を劇場で体感して欲しい。
そう語っています。

このあたり劇場に運ぶ意味があっていいですね。
では感想に参ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クッソ泣いたぞ、この野郎!

試写会の感想を書いて貼り出すという試みをしていたけど
さすがに言葉が汚いな、と思った「何度も泣いた!」
と書かせてもらったが、

クッソ泣いた!

と書きたかった、思うがままの感想はそれだ。
この作品はファンタジーでありながら起こりうる出来事であり、親子という関係性を持つものなら揺さぶられることは間違いない作品だと思う。

ファンタジーという虚構ではあるが
現実にありえないことはない
出来事であり、
感情であり、
湧き起こるこの気持ちは真実だと言わざるおえない。

この作品は数百年を生きる少女が里から離れ人間の子どもを拾って親子として一緒に生きていく物語である。そこには寿命の違いだけでなく境遇の違いという現実にない関係性だけでなく、親子や同族、男女、様々なリアリティのある関係性を描いた群像劇でもある。
数えられない程泣き所を用意されているあたりもさすが岡田麿里脚本であり監督作となったなと感じる。本当に何度も泣いた。

もちろん泣き所だけでなく、
岡田麿里脚本にある独特の黒い部分がある。
ここさけでいう山の上にあるお城に憧れたが実はラブホだった
とかそういうのだ。
単独レビューはないけど当時のベスト3記事にしてあげている。

今回でいうと序盤で死んでしまった母親の腕から赤ん坊を抱きかかえるシーンがある。死体って死後硬直で硬くなってしまうんですけど...わかりますよね。抱きかかえた腕や指が硬くて赤ん坊を取り出せないんですよ。
そのために無理やり指を反らしていくんですがバキバキいうもんでなかなか痛々しい

それだけでなく美しい背景や世界観も本作の特徴ですね。
特に透き通る青空温かみのある緑の大地
透き通るといえば冒頭の織物から透けてみえる背景は圧巻。

 

透き通るような世界と幻想の者たち

この世界はいわゆるファンタジーの世界。
よくある剣と魔法の世界というわけではありません。
幻想の世界に住まう生物や理が中世をベースとした世界に根付いています。

まず主人公であるマキア
彼女の一族イオルフの民は一定の年齢まで達すると成長を止め、人間とは比べ物にならないほど長寿です。姿は人間と代わりありません。髪色など身体的特徴で判別は出来るようです。
彼らは寿命が異なる人間と交わることをせず一族だけで機織りで生活の糧としています。一族の織物は高く売れるようです。

次にドラゴンような出で立ちのレナト
ファンタジーの代表格といえる象徴的な生物。
イオルフの民と双璧をなす神秘の象徴。
メザーテというイオルフを襲った国はこれを使役とており、イオルフも共に支配することで古の力を支配する国として力を誇示したかったようです。

これらが中心であとは現実にありそうな世界観ですね。
でもこれほどまで透き通った世界は現実どころか虚構の世界でもなかなかないですね。先もいいましたが織物が透き通って背景が見える演出が始まってすぐ見ることが出来るのですが本当に綺麗なのです。
もちろん青空もそうだし、ロウソクなどの灯りに照らされた夜も温かみを感じられる雰囲気をまとっています。
映像に関しては文句なしに楽しめるでしょう。

ファンタジー世界、だけどあるのはどこにでもある人間ドラマ

ファンタジー世界とは言いましたが、
その世界の人々は現実の世界と変わりない人間ドラマがあります。

それは血や種族の繋がりの有無の関係ない親子、家族のあり方
望まない者との子への愛、
国の為に忠節を尽くす者
様々な人となりを見ることができ、
映像で語られない出来事や人の感情の変遷を思い起こすことの出来る作品だと思います。それでいて本編に物足りなさを感じないのは密度の高い作品である証拠。

マキアはイオルフを襲われ一人となり
同じく生まれて間もないのに親を殺され一人となったエリアル
ひとりぼっちとひとりぼっちは出会い、親子になったけれども
長寿ゆえにいずれエリアルを見送ることになるマキア
長寿ゆえに追われるマキアを案じるエリアルの複雑な感情
長い年月で変わるものと変わらないものの二人。

一方でメザーテに襲われ最愛のレイリアを奪われたクリム
奪われた時を取り戻すべく仲間と共にメザーテに戦いを挑む。
レイリアはメザーテの政略結婚に利用され一方的に時を動かされ、
それを受け入れようとしている。

マキア、レイリア、クリム。
3人のイオルフの民は時を進める者、時を取り戻す者、時を進められる者という三様の生き様を描きつつ、否応無く回る世界。
それを取り巻くエリアルや家族だったラングたち、メザーテの姫メドメル、軍人イゾルなど各々の立場や生き様を見ていると親子の物語だけでなく群像劇のようにも見える。各々に現実にありえる立場だし、感情移入出来るので誰の視点にもなれると思う。
大筋は親子の物語なので子を持つ親は何かしら思うだろう。子を持たないぼくでも子の立場で思うものもあったし、もし親になった時に子を持つことがどういうことかと考えて見て複雑な気持ちになったものである。

エンディングを迎えた時、感動とは別のなんともいえない感情が残るだろう。
多分残る。

ただ固有名詞は多いし、長い年月で姿が変わっていく人間と、
変わらないイオルフの民を見ていると理解が追いつかなかったり、
混乱することもあるかもしれない。
物語の全容がそれによって理解出来なくても
各々の感情を感じ取れると思う。

 

また親子の物語が主軸ながら、
この世界での情勢や逸話に沿った出来事なども全てとは言わないがオチとして描いている。
メザーテはレナトを使役して太古の力を支配する国として誇示するばかりか、
王族にイオルフの民を迎え入れ、子孫に長寿の因子を残して盤石なものにしようとしました。しかし事は単純には行きません。そればかりか古の力が本当に幻想と化していく真実に突き当たることになり、ファンタジー作品であるがゆえの世界観から語られる内容もあるので親子や異種間の関係を描くだけない締めくくりもあるので満足でした。

そして最後はマキアと一緒に大いに泣いて欲しい
マキアたちイオルフの民は姿が変わらず長い時を生きるけど、エリアルたち人間の寿命は短く姿は成長し衰えていく。その中で変わるもの変わらないものがあるのは肉体的なものなど関係ない、変わらない。そして親子の絆は何かを引き継いでいくということなのだろうな...と思う。

 

満足度:★★★★☆(8/10)

設定がわかりづらい点以外は文句ないです。
もう一度本日観に行きます。
買ってたムビチケを消費しにいきます。

 

 

*1:舞台挨拶は全国巡業されている